エンジニア、食べ物にはまる

食べ物の感想をシェアしたいブログです。時々、仕事の話もさせてください。(仕事はエンジニアです。)

乱立するストアの路地裏に新生飯店

福岡市役所近くには、今やオシャレの代名詞と断言しても差し支えないスターバックスやシアトルズコーヒーなどのアメリカ発コーヒーチェーン店、レンタルCDショップから巨大メディアストアに変貌したTSUTAYA、理路整然と書籍群がきれいに陳列され、ジャストインタイム方式のようなレジスタッフが並ぶ紀伊國屋書店がある。

それぞれの個性を出しながら成長している巨大ストア群が乱立する通り沿いだが、一本入った裏路地には戦後に存在したかのような雰囲気をかもしだす中華料理屋がある。入口付近は本当にガラクタだらけで汚いし、営業中かを疑いたくなるような「お客様どうぞお入りください」感が全くない。日々、復興税やら消費税やらでお国に税金を献上しないといけないこのご時世に生き延びる気はあるのだろうかと疑いたくなるそのお店こそが私の行きつけ新生飯店だ。

新生飯店のドアを開けるとまずクタクタの黒いTシャツを着て、汗をかきながら中華料理を作る店主、機敏に働く奥さん、後ろには客に丸見え、というか、あえて見せてるのでは?というぐらい隠す気がない汚い洗い場が目に飛び込んでくる。また、油が飛び散って黄ばんでいる壁としばらく変えていないであろう手書きのメニュー表はいつも変わらぬ佇まいでむしろ安心感を醸し出している。

いつまでマーボー豆腐定食をおすすめしているのであろう。。

そしてカウンターしかない1階はいつ行っても満席だ。

お昼時は中年以上のサラリーマンに占領され、お隣のおじ様と体が触れ合ってしまうのはこの後食べる中華丼のためなら、我慢できるといえよう。

 

新生飯店には美味しいメニューが並んでいる。細かく刻まれた野菜やお肉が合わさったちゃんぽん、常連さんが注文する皿うどん、摩訶不思議なダル麺、そして僕の大好物、中華丼だ。

僕が入店したときにはカウンターが満席だったため、用意されている待ち用の椅子に腰かけ、席が空くのを待つ。待っている間にてきぱきした奥さんが注文を聞いてくる。
「注文なんにしますか?」
「中華丼1つ」

「はーい!中華丼!」
「はいよ」

これが客から奥さん奥さんから店主へオーダーが伝達されるまでのやり取りだ。


お昼から瓶ビールを飲んでいる定年退職後であろう、おじさんがお愛想したので、そこの席に通された。昼間にビールを飲めてさぞ幸せそうに爪楊枝で歯をぐりぐりしながらお店を出て行った。後は昼寝をして夜はまたお酒を飲み、また眠るのだろう。飲んで、寝て、飲んで、寝ての繰り返しの日々はお酒好きにはたまらない、良い週末を。

席に着くとちょうど店主が調理しているコンロ周りが覗きこめる。僕より前に着座しているお客さん用の皿うどんを作っているのであろうが、それにしても大量の具材を使っている。料理が届いていないお客さんが僕を除いて4名おり、他の空いているコンロでは何も作っていない事を考えると4名分の皿うどんを作っているのかもしれない。ちなみにここの皿うどんリンガーハットのような揚げ麺ではなく、生麺を使っているため、もちもちした麺が特徴的な人気メニューの1つだが、僕は中華丼に虜なので、未だ食べたことがない。

皿うどんが完成すると、いよいよ中華丼作りに取りかかってくれた。皿うどんはやはり、4人前だったようだ。

中華丼はニンジンやタケノコ、豚肉、イカ、白菜のような具材を卵でとじて、作り方を教えてほしいぐらい美味しいアンを混ぜ合わせて作っている。具材や作り方の順番は想像なので、正確ではないが、ここのアンが兎にも角にもたまらなく美味しい。
元来、片栗粉を使ったとろみのある料理が大好きな僕にとってここの中華丼は、まさにドンピシャ。

レンゲですくってアツアツの状態で下に埋もれた白飯とたっぷりかかった中華アンを一緒に口の中に送り込む。最高のひと時だ。一緒に添えられた豚骨でだしをとったような白濁色のスープも良く合う。中華丼、スープも見事なお味で完食。沢庵を2切れ出してくれるのだが、このために割りばしを使うのも心もとないので、食後に素手でいただこう。お会計はたったの630円。

「ごちそうさまでした」とお礼を言うと、僕が入店してからひっきりなしに注文を捌いていた店主が最後はお顔を上げて大きな声で「ありがとうございました」の一言。世間一般的には、ありがとうございました。を発しても顔を上げない店員は多いが、どれだけ忙しくても最後はお顔を上げて御礼を言う。

味はさることながら、このお店がサラリーマンに人気な理由がなんとなくわかった気がする。